【福岡】全国初「砂ゼロアサリ」販売に向け協議会
福岡市が開発を進める日本で初めての身に砂を含まない養殖アサリ「砂ゼロアサリ」の試験出荷が始まるのを前に、27日、市と漁協の関係者が協議会を開き、今後の販売戦略を話し合いました。
福岡市は、漁業者が安定的な収入を得られるよう、ブランド価値のあるアサリを育てようと、海中につるして育てることで身に砂を含まない日本で初めての「砂ゼロアサリ」の開発に取り組んでいます。
この「砂ゼロアサリ」が、開発から2年をかけて、このほど食べられる大きさに成長し出荷できる状態になったことから、27日、福岡市と漁協の関係者が協議会を開いて今後の販売戦略について話し合いました。
「砂ゼロアサリ」は、砂抜きをせずにすぐ調理できるのが特長で、協議会では、来月から香港のレストランに試験出荷するとともに、市内にある漁協直営のレストランで「砂ゼロアサリ」を使った料理を提供することを決めました。
27日は、「砂ゼロアサリ」を使った料理の試食も行われ、漁協直営のレストランでは、アサリの炊き込みごはんとクラムチャウダー、それにアサリと冬野菜の酒蒸しの3つのメニューを提供することを決めました。
出荷できる量がまだ限られているため、「砂ゼロアサリ」の料理が提供されるのは、当面、週に1回の木曜日のみですが、反応がよければ将来的には通常のアサリの市場価格より高値で流通させたいとしています。
福岡市漁業協同組合弘支所の松田英孝所長は「自信を持って提供できるおいしいアサリができました。漁業の後継者不足が深刻なため安定的な収入が見込めるこの事業を成功させ、新たに漁業を行う人が増えるようにしたいです」と話していました。
「砂抜き不要」が高付加価値に
陸上の、海水を入れたプールで8ミリほどの大きさまで稚貝を育て、その後、海上に張ったロープにつるして2年から3年かけて3センチほどの大きさに育てます。産卵から育成まですべてを自前で行う「完全養殖」は、アサリでは全国で初めての試みで、成功すれば安定的な生産が見込めます。
アサリは単価が安いうえに、温暖化などの影響で年々生産量が減少していて、不安定なアサリ漁は収入源にならないという声が漁業者からも出ていました。さらに、漁業の担い手不足も深刻で、福岡市漁業協同組合では、漁業のみで生計を立てている組合員がおよそ440人と、25年前の半分以下に減少しています。
「砂抜き」不要という付加価値の高いアサリを高い値段で流通させることで、安定的な収入につなげ、漁業に参入する人を増やしたいと、市や漁業関係者は期待しています。