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【読書感想】芸能人と文学賞 〈文豪アイドル〉芥川から〈文藝芸人〉又吉へ 

又吉直樹さんが『火花』で芥川賞を受賞した際には、作品の内容以前に「芸人が書いた小説が芥川賞を受賞すること」について、さまざまな意見が飛び交っていました。

 中には、作品を読んでもいないのに「客寄せパンダ」的な扱いをしていた人もいて、なんだかなあ、と思ったんですよね。

 『火花』は、素晴らしい小説で、芥川賞をとっても全然おかしくないと感じていたので。

 この本では、「文学賞研究家」である著者が、芸能人・有名人が文学賞を受賞したり、ノミネートした事例を、芥川賞直木賞80年余りの歴史とともに振り返っていくものです。

 いまでも、有名人が小説を書くと「直木賞を狙います」なんていうのが見出しにされることが多いのですが、そのルーツはどこにあるのか。

 芸能人が書いた小説が文学賞を受賞するというのは、どういう意味があるのか。

 そもそも、小説において、評価されるのは作品の中身だけのはずではないのか。

 その一方で、有名人が書いた作品というのは、話題性があるし、売れるのも事実です。

 芸能人のなかには、それをかえって敬遠する人もいる、というような話も出てきます。

 社会にインパクトを与えたアイドル的な作家といえば、まず、石原慎太郎さんが挙げられます。

 石原さんは、一橋大学卒業前の1956年、23歳のときに『太陽の季節』で芥川賞を受賞し、一躍、時の人となりました。

 発表の瞬間は、それまでの受賞者と大差ないぐらいの、平穏な新聞記事が多かったんですが、いまより数倍・数十倍は威力があったとも言われる週刊誌やラジオが放っておきません。受賞者自身も、それらの要請に逃げ隠れせず、真正面から応えたことが火に油を注ぎ、312日に発売された単行本『太陽の季節』(新潮社刊)には全国から注文が殺到。1か月半で約13万部に達したといい(『日本読書新聞1956430日号)、石原慎太郎さんの名前、顔、髪型、言動は、一気に広まりました。ニュー・スターの登場です。

 ただ、じっさいのところは、受賞作(を含む単行本)は最終的には225000部と、当時としても中規模くらいのベストセラーでおさまってしまいます。

 しかし、あれだけ騒がれた割に、前年の第1位『はだか随筆』の60万部の売行きにははるかに及ばず、30万部を割るという有様(574月・出版ニュース社刊『出版年鑑1957版』)

 えっ、あんなに騒がれたのに、そんなものなの? という感じで、社会に与えた文学賞受賞の強い印象だけが、やたら突出した最初の例にもなりました。

 いまとなっては、石原さんのことは知っていても「太陽の季節」を読んだことがない人のほうが圧倒的に多いでしょうが、芥川賞直後からそうだった、と表現するのが適切なようです。そこが、石原慎太郎さんの受賞が、文学の話題を超え、タレント輩出イベントの嚆矢として、いまも伝説となっているゆえんでもあります。

 日本がそんなに豊かではなかった時代とはいえ、えっ、それだけしか売れなかったの?というのと、売上の初速がすごかったけれど、あまりその後は伸びなかったんだな、というのと。

 僕も『太陽の季節』は、読んだことがありません。

 「障子に陰茎を突き立てるシーンがある、トンデモ小説」みたいなイメージだけを持っていて。

 芸能人が書いた本って、発売直後に一気に売れて、1か月もするとブックオフに在庫が溢れる、という印象があります。そして、けっこう売れたはずなのに、何年かすると、存在そのものが忘れられてしまう。

 齋藤智裕(水嶋ヒロ)さんの大ベストセラー『KAGEROU』なんて、6年半くらい前にあんなに売れたのにタイトルを聞くと、「そういえば、そんな本が売れたこともあったねえ」って感じですし。

 

 

【参考】

BLOGOS  17.11.24

http://blogos.com/article/261084/#top